ID-S21 メカニカルシールについて |
メカニカルシールについて メカニカルシールは自動車、産業機械、家庭用電気製品、石油精製、化学プラント、宇宙航空機器などに使用されるポンプ、圧縮機、かくはん機、エンジンの代表的な回転軸からの流体の漏れ防止に使用されている装置です。簡単な構造であるオイルシールも回転軸シールとして有用ではあり広く使用されていますが、潤滑性に富む低圧の流体に限定されてしまいます。潤滑性に乏しく流体圧が高い流体には自己潤滑性、耐食性、耐圧性に優れた構成になっているメカニカルシールが必要な密封装置になってきます。 一般的なメカニカルシールの特徴を列記すると次のようになります。 |
@ | 漏れを極めて少なく抑えることができる。 |
A | 摺動面の摩擦力が小さく、したがって動力損失が少ない。 |
B | 摺動材料の摩耗を少なく抑えることができる。従って寿命も長い。一般の使用条件であれば、1〜2年間以上の連続使用が可能である。10年間連続使用の例もある。 |
C | 高温、高圧、高速、あるいは極低温などの苛酷条件にも使用できる。 |
D | 腐食性のある流体、固体粒子が含まれている流体、各種液化ガス用軸シールとして使用できる。 |
E | 接触中は接触が自動調整されるので、メカニカルシールの調整は不要である。 |
F | 軸やスリーブの摩耗がない |
G | 特殊構造にすることにより、10mm以上の軸移動や軸偏心に対処できる。 |
H | イニシャルコストは高いが、ランニングコストは安い。 |
I | 装着、交換がやや難しいが、カートリッジタイプの採用により取り扱い易くなる。 |
メカニカルシールの構造上の特徴は、図1に示すように回転軸に垂直な2端面を有する端面シールです。その基本構造は、次のとおりです。 |
(1)密封環 いずれか一方が回転軸とともに回転する回転軸に垂直な二つの平滑な摺動面(シートリング、従動リング)を持ち、密封端面での接触圧力によって回転摺動しながら密封作用を行います。一方の環は弾性部材のばねにより軸方向に可動です。 摺動材料としては一般に耐摩耗性にすぐれた超硬合金、セラミック(アルミナ、炭化けい素)などの硬質材料とカーボンを代表とする自己潤滑性に優れた軟質材料との組み合わせで使用されます。 (2)2次シール(パッキン) 密封環に装着され、固定環とフランジ、回転環と軸との密封を行います。 (3)弾性部品 ばね作用により密封環を押して接触圧を与えます。接触圧は密封流体圧によっても付加されます。 また、機器の振動、軸振れ、圧力変動などの外乱に対して密封環を追随させ、密封環の摩耗に対しても密封環を押して追随させます。 (4)ドライブ機構 トルクを回転環に伝達したり、固定環の回り止めを行います。スプリングドライブ、ピンドライブ、ベローズドライブおよび凸部と凹部との噛み合わせによるクラッチドライブが代表的なものです。 |
「出典」 メカニカルシールQ&A 月刊トライボロジ1994.11 p30 |