ID-S22 ピストンリングについて |
ピストンリングについて ピストンリングはピストンに装着され一般的には第1圧力リング、第2圧力リング、オイルコントロールリングで構成され、それぞれが以下の機能を発揮します。代表的なピストンリングの機能としては @気密保持 ピストンとシリンダ内面間の機密を保持し、圧縮、燃焼ガスの漏れを防止します。またブローバイガスの吹き抜けによるオイルの劣化の防止を行います。 Aオイルコントロール ピストン、ピストンリング、シリンダ間を適正に潤滑し、耐スカッフ、耐摩耗性の向上をはかります。しかしオイルが必要以上になると燃焼室で燃えてオイル消費量が増加します。 B熱伝達 ピストンに流入する熱の大部分はピストンリングを通過してシリンダ壁へ逃げ、ピストンの冷却を行います。 各リングの役割を表1に示しました。 |
またピストンリングは合口と呼ばれる切断部を有し、ピストン装着時は合口を広げピストンヘ組み付けます。シリンダヘ挿入時は熱膨張差を考慮した小さなすき間になるように、上記機能を満足すべく設計されています。 ピストンリングは前記機能を満足すべく2〜4本で構成されています。2サイクルエンジンではオイルコントロールリングが無く、圧力リング2本で構成されています。また、長寿命化が要求される中、大型ディーゼルエンジンでは4本リング構成のものがあるが、一般的には第1圧力リング、第2圧力リング、オイルコントロールリングの3本構成になっています。4サイクルガソリンエンジンで一般的に使用されているものを図1に示しました。 |
第1圧力リングは主に気密作用と熱伝達を受け持ちます。燃焼の影響を受けすべり面は高温、高圧になり、潤滑的に厳しい状況の中、耐摩耗、耐スカッフ性に優れた表面処理が行われています。 オイルコントロールリングは当り幅が狭く高面圧でシリンダとの油膜厚さを薄くしオイルをコントロールするようになっています。また、上下サイドレールとエキスパンダから成る3ピースの構造により上下サイドレールはピストン溝上下面とシールする構造になっており、オイルが上方に上がるのを防止するオイルコントロール機能を持たせています。 第2圧力リングは気密作用とオイルコントロール機能を持たせてあり、エンジンごとの特性に応じてリング断面形状が検討されています。 ピストンリングは以下に述べるように、潤滑的に困難な問題が存在します。 |
@ | 高温、高圧の燃焼ガスをシールし、激しく運動する。 |
A | 往復運動であるので、上・下死点で速度が0になり油膜が形成され難い。 |
B | 運動後のすべり面は、すり合わせによりくさび形になり油膜形成能力がある。 |
C | オイル消費の点でシリンダへ十分オイルを供給できない。 |
D | 摩耗に対して有害な成分を含んでいる燃焼ガスにさらされる。 |
潤滑的問題を解決すべく形状、材質、表面処理が検討され耐スカッフ性、耐摩耗性、シール性能を満足すべくピストンリングが設計され使用されています。 |
(回答・日本ピストンリング 技術開発第1部 ピストンリンググループ) |
「出典」 ピストンリングQ&A 月刊トライボロジ1995.6 p45 |