ID-S24 オイルシールの種類と特徴について
 
 オイルシールの種類と特徴について
 オイルシールの種類はJIS B 2402では9種類の形状を決めています。一般に使用されているオイルシールはJISに規定されているものよりはるかに種類が多く、シールメーカーごとに独自の型式記号によって分類されています。オイルシールは機能から回転用と往復用、また内面用・外面用・端面用に大別されます。
 表1に最も多く使用されている回転内面用オイルシールの代表的な種類およびその特徴を示します。焼付型はシールリップと補強環を同時に加硫成形したもので、最近はこのタイプが最も多く用いられています。組立型はPTFEなど金属に接着しにくい材質のリップの場合や、二つのシールやスリーブ、取付ケースを一体にする場合などに用いられます。単体型は補強環のないもので取付け、取りはずしが容易ですが、製品および取付部の寸法公差による影響を受けやすいので、使用に当たっては注意が必要です。
 
表1 オイルシールの種類と特徴
 
種類 参考図例 JIS記号 特徴
構造 リップ数 ばね
焼付型 あり S,SM ばねのある単一リップのもとで、ダストの恐れの少ない油液のシールとして最も一般的に用いられる。
なし G,GM ばねなしの単一リップのもとで、簡単なグリースシール、ダストシールに用いられる。他のダストシールと併用される。
あり D,DM ばねのあるリップと、ばねのない補助リップのもので、ダストを考慮した油液のシールとして最も広く用いられる。
ばねのあるリップ2個を反対方向に向けて組み合わせたもので、2種類の油液のシールとして用いられる。
組立型 なし GA PTFEなど金属に接着しにくい材質のリップを組み立てて用いる。
あり 圧力によるリップ部の変形を小さくするため、保持器を一体としたもので耐圧用として用いられる。
あり 土砂などにより軸の摩耗が懸念されるとき、スリーブごと交換できるようにオイルシールとスリーブをセットにしたもの。
単体型 あり 機械の構造上軸端から挿入できないとき、あるいは補修交換に著しい工数がかかる場合などに、一ヶ所切断して用いる。
なし ころがり軸受用プランマブロックの台形溝に接着して使用されるグリースおよび軽微なダストシール。
 
 オイルシールのリップ部は、密封対象の油や薬液に直接接触するため、リップの材料は耐油性、耐液性、耐熱性、耐寒性、耐摩耗性などが要求され、一般に表2に示すような合成ゴムが使用されています。各シールメーカーはこれらのゴムを用いて使用用途に合わせた種々のリップ材料を用意しているので、選定にあたってはシールメーカーのカタログもしくはサービス員に相談し、該当の機械の使用条件に適合する材料を選定する必要があります。
 
表2 オイルシールに使用される主なゴムの種類と特徴
 
ゴムの種類 特徴 温度範囲(℃) 耐油性 耐アルカリ性 耐酸性 耐水性 耐候性 耐摩耗性
ニトリルゴム(NBR) 鉱油系の油に耐性があり、耐摩耗性にも優れているため、オイルシール用として最も多く使用されている。ただし、ケトンやエステルなどの極性溶剤には使用できない。 −40〜+125
水素化ニトリルゴム(HNBR) オイルシール用としてのニトリルゴムの特性を保持し、さらに耐熱性、耐油性、耐候性がニトリルゴムに比べ優れている。 −25〜+140
アクリルゴム(ACM) 耐油性はニトリルゴムと同じように優れており、耐熱性はシリコーンゴムに次ぐ性能を持っている。また耐候性にも優れているが、耐アルカリ性や耐水性は、他のゴムより劣る。 −25〜+150 ×
シリコーンゴム(VMQ) 優れた耐熱性、耐寒性と耐候性を兼ね備えている。ただし、耐アルカリ性や耐水性は、他のゴムより劣る。 −60〜+225 ×
ふっ素ゴム(FKM) シリコーンゴムをしのぐ耐熱性を持つゴムで、優れた耐油性と耐薬品性をあわせ持っている。オイルシール用ゴムとしての特性はバランスがとれており最も優れている。 −20〜+250
「出典」
  オイルシールQ&A 月刊トライボロジ1995.10 p88
 
 

 
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