ID-274 発火点について


発火点(Ignition Temperature)とは、可燃性物質が自然に燃焼を開始する(発火する)のに必要な最低の加熱温度です。着火点、自然発火温度ともいいます。発火点の値は、加熱時間、容器の材質や形状等で変動しますのでその物質の定数ではなく、ASTM E659-78に規定されているような各種の測定法がありますが、測定方法が異なる値をそれぞれ互いに比較することはできません。自然に燃焼する発火点に対し、火を近づけたときに可燃性物質が燃え出すことを引火といい、引火がおきる最低温度を引火点といいます。 いろいろな物質の発火点や引火点を表1に示します。

表1 物質の諸性質
物質名 沸点(℃) 発火点 (℃) 引火点(℃)
水素
-259.1
400
-
プロパン
-42.1
450
-
エチルアルコール
78.3
365〜220
12〜50
ガソリン
30〜180
510〜550
-45
灯油
180〜250
400〜500
65〜85
大豆油
-
450
280

可燃性物質が着火するきっかけは可燃性物質と空気の混合物が高温に加熱されることです。加熱され高温になると可燃性物質を構成している分子が酸素と結合を始めます。一度酸素との結合が始まると発熱し、その熱により連鎖的に周囲の分子が酸素と結合していくことになります。しかし、加熱をやめると燃焼によって発生する熱がその物質の温度を十分に保つだけあれば、その物質は燃え続けますが、発生する熱よりも逃げる熱が大きければ、加熱をやめると同時に次第に可燃性物質の燃焼は止まってしまいます。

一方、そのものの温度が十分に高ければ、燃えにくいものでも燃えだすという現象が見られます。例えば天ぷら油の火災がその例です。天ぷらを上げている最中(180℃程度)では天ぷら油は燃えだしませんが、コンロにかけたままで450℃以上に達すると自然に燃えだしてしまいます。この温度が発火点です。

参考文献) 理化学事典




Copyright 1999-2003 Japan Lubricating Oil Society. All Rights Reserved.