ID-285 油圧システムのフラッシングについて
 
ゴムプロセス油について
 
 ゴムプロセス油は一般の潤滑油のような使用とは異なり、ゴムに練り込んでゴムの柔軟性や弾性を良くし、長持ちさせるために使用されます。
 
 使用方法としては、次のような分類とされています。
(1) 天然ゴムや合成ゴムの素練り作業あるいは混練り作業の段階で、ゴム[100]に対して[5〜100]の割合で混入される『ゴム加工油』
(2) 合成ゴムの製造時に乳状ラテックスの段階で、ゴム[100]に対して[25〜50]の割合で加えられる『ゴム伸展油』
 
 ゴムにプロセス油を加えることによって、油は「軟化剤」として働き、ゴムに外部より力が加わり「弾性変形」する時に発生するゴム分子どうしの激しい“こすれあい”に潤滑作用を示してその変形を容易にし、内部摩擦を低く抑え摩擦熱の発生も少なくすることができます。また、ゴム製造時にはその潤滑作用によりゴムの「練り」を容易にすると共に、各種の配合剤を拡散、均一化しやすくする役目も果たします。
しかし、ゴム分子との相性が悪いと長期間の使用中に潤滑油が分離し、滲み出してきたり逆にゴム製品にひび割れを発生させたりします。
 
 ゴムの種類には、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等があり、配合剤(用途により大きく異なりますが)には、プロセス油、カーボンブラック、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、硫黄、ステアリン酸、加硫促進剤、老化防止剤 等が使用されています。
 
 ゴムプロセス油を添加する目的を整理しますと、
(1) 未加硫ゴムの加工性向上
(2) 加硫ゴム物性の向上あるいは調整
(3) 原料コストの低減
 などですが、製造するゴムの種類と用途によって、添加油を次の3種類に分類しています。
1) パラフィン系プロセス油 (パラフィン分を50%以上含有する油)
2) ナフテン系プロセス油 (ナフテン分を30〜45%含有する油)
3) アロマティック系プロセス油 (アロマ分を35%以上含有する油)
パラフィン系は、着色をきらうゴム製品や運動靴、タイヤチューブ等に使用されます。
若干加工性や製品の強度が劣りますが、低温特性や弾性、発熱性に優れています。
アロマ系は、自動車用タイヤやゴムホース、産業機械用ベルト等、着色をいとわない製品に使用されます。低温特性や発熱性、弾性が若干劣りますが、引張り強さ等の物理的性質が良く、加工性の点でも極めて優れていますので、多量の配合が可能となります。
各種ゴム製品の中で、アロマ系プロセス油を使用する自動車用タイヤが全体の約60%を占めていると言われています。
ナフテン系は、性能的にパラフィン系・アロマ系の中間に位置し最もバランスの良い特性を示します。ゴムテープ、電線被覆ゴム、一般ゴム被覆、ゴム引き布、ゴム靴等に使用されています。
 各プロセス油の特性とゴムとの相溶性について、表1表2に概略を記します。

表1 プロセス油のタイプ別性質
項  目 パラフィン系 ナフテン系 アロマ系
物性 密   度 小さい 中程度 大きい
粘   度 低〜中 低〜中 高 い
屈 折 率 小さい 中程度 大きい
アニリン点(℃) 100以上 90〜50 40以下
ゴム練混み性能 加 工 性 劣 る 良 好 優れる
非汚染性 優れる 良 好 不 良
親 和 性 低 い 良 好 優れる
安 定 性 優れる 良 好 中〜低い
弾 力 性 優れる 良 好 概ね良好
抗 張 力 優れる 良 好 概ね良好
耐 寒 性 優れる 良 好 劣 る
配 合 可 能 量 少 量 多 量 極めて多量
 

表2 ゴムとプロセス油の相溶性
ゴムの種類 パラフィン系 ナフテン系 アロマ系
天然ゴム 良  好 良  好 極めて良好
スチレン・ブダジエンゴム 良  好 極めて良好 極めて良好
クロロプレンゴム 不  良 極めて良好 極めて良好
ブチルゴム 良  好 概ね良好 概ね良好
ニトリルゴム 不  良 概ね良好 良  好
ポリブタジエンゴム 良  好 極めて良好 極めて良好
エチレン・プロピレン・ターポリマー 極めて良好 良  好 不  良
 
 
 パラフィン系およびナフテン系のプロセス油は、適切な粘度を有するそれぞれの精製基油がそのまま用いられることが多く、従って性状も同粘度の基油とほぼ同等です。
しかし、アロマ系プロセス油は基油を精製する工程の一つである溶剤抽出工程での抽出物(エキストラクト)が主原料となっています。このため、色相は黒味を帯びた蛍光暗緑色で性状も潤滑油とはやや異なります。
 
 性状分析においてもゴムとの相溶性などの関係で、プロセス油特有の試験項目が多くあり、例えば屈折率や粘度比重恒数、リフラクティビティー・インデックス(RI)、カーボンタイプ比率、ガラス転移点、ロスラー分析といった試験法があります。
「出典」
  JSRハンドブック他
 
 

 
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