ID-308 難燃性作動油の燃焼性評価法について
 
 
1.はじめに
 
 JISでは作動流体の難燃性(燃焼性)を量的に規定する試験法は3つの引火点測定法のみです。しかし、諸外国の試験法規格は実に多彩で数も多いようです。試験法の規格リストを表1に示します。
 表1に見るようにその試験法の数はかなり多いです。様々な火災の発生状況をシミュレートして危険度を測ろうとするためです。
 例えば、噴霧点火試験は流体回路の一部に穴があいて高圧で作動液が霧状に飛び散り、そこに着火源があった場合を想定しているし、灯心−発火試験は漏れて布にしみ込んだ作動液が着火源に触れて発生する火災を想定しています。
 数は多いですが似たような試験も多く、細部が少しづつ異なっています。
 それらの代表的な試験法7つについてその試験内容を紹介します。
 
 
2.難燃性評価方法
 
2.1.引火点及び燃焼点試験(COC:クリーブランド解放式)
 ひしゃく形の容器に入れた液体を下から電熱器で温度を上げ、容器の上を通過する小さな裸火によって、蒸気に引火する温度とそのまま液体が燃焼を続ける燃焼点温度を測定するものです。
2.2.自然発火温度試験
 加熱した金属製のフラスコの中に注射器で液体を滴下させて着火源としての裸火のない状態で液体自身が発火する温度を測定するものです。
2.3.マニホールド発火試験
 内燃機関等のイグゾーストパイプに見立てた内部加熱機構を持ったパイプの上に液体を滴下させて発火する温度を測定するものです。
2.4.パイプクリーナ試験
 液体をパイプクリーナ(太さ数mmの円筒ブラシ)にしみ込ませて炎の中を繰り返し通過させて、着火するまでの回数によって燃焼性を評価するものです。これにはシャーレに入れ放置して水分量を減らす前処理があります。
2.5.火炎伝播試験
 試料をしみ込ませたアスベストテープに火炎を近づけて、着火に掛かる時間と継続燃焼時間を調べます。
2.6.低圧噴霧点火試験
 塗料の吹き付けガンから着火源に向けて噴霧した液体の着火の有無を調べます。
2.7.高圧噴霧点火試験
 加圧した液体をノズルから噴霧して炎によって点火し、着火したときの炎のノズルからの距離と着火炎を遠ざけた後の燃焼継続時間を測定します。
 
 
表1 難燃性流体の燃焼性に関する関連規格
規格名

試験項目
ANSI ASTM BS DIN EURO
NORM
FM FS
791
IP ISO JIS MIL NCB NF SAE
AMS
UL USBM
(1) 引火点燃焼試験
  a.ペンスキーマルテンス
  c.COC
   (クリーブランドオープンカップ)
 
Z11.7
Z11.6
 
D93
D92
 
2839
4689
 
51758
51376
     
110
2
110
 
34
36
 
 
2392
 
K2265
K2274
     
 
T60-118
   
340
 
(2) 自然発火温度試験 Z11.189 D 2155   51794     3       H-83282A
H-83306
    3150
C
340 30
(3) 溶融金属点火試験             115               340  
(4) マニホールド発火試験             2       F-7100
H-83306
    3150
C
   
(5) 溝型鋼への噴霧試験           6930                    
(6) 蒸発による引火能力への影響
(灯心発火試験を含む)
            605
3
      F-7100
H-83306
H-83282A
    3150
C
  30
(7) 高圧噴霧点火試験         6930  
352
  TC131/
SC6
 
83E
  F-7100
H-83282A
H-83306
H-46170
48618 3150
C
   
(8) 低圧噴霧点火試験   D 3119         605             3150
C
  30
(9) 火炎伝播試験
 (石炭粉法)
         
  2   TC131/
SC6
85E
      E48620      
(10)同アスベスト法                     H-83282A
H-46170
         
(11)可変圧縮機関点火試験 Z11.254 D 613           TC131/
SC6
84E
  H-19457B          
 
 

 
Copyright 1999-2003 Japan Lubricating Oil Society. All Rights Reserved.