ID-318 グリースの密度について

燃料油や潤滑油の密度は、一般的に測定されておりますが、グリースの密度はむしろ特殊性状に入るため、普通は測定されておりません。
普通グリースの密度は水より軽いのが当然ですが、グリースを外観から判断しますと水より重いのではないかという錯覚に陥りやすい事です。
一般的にグリースの密度は0.90〜0.97(殆どは0.90〜0.93)の範囲にあると考えるのが常識的です。
ここでは5種類の異なるグリースの実測データーとグリースの各原料密度との関係について紹介します。

グリースの密度は普通ハバード密度びん法(JISK2249)により測定します。試験方法の詳細については省略しますが、その測定上特に気泡の混入に十分注意する必要があります。

5種類の異なったグリースの実測密度と、これらグリースの主要成分である基油、増ちょう剤、添加剤の各原料密度から求めた理論密度の比較を表-1に示します。

 

グリース
No.
構成成分 原料密度
(15/4℃)
理論密度
(注)
測定密度
鉱油
脂肪酸
水酸化リチウム
添加剤
0.889
0.929
0.970
1.160
0.901 0.903
鉱油-T
鉱油-U
ステアリン酸アルミニウム
0.975
0.954
1.020
0.973 0.969
鉱油-T
鉱油-U
脂肪酸
消石灰
0.935
0.900
0.914
0.900
0.929 0.922
鉱油
脂肪酸
消石灰
0.934
0.914
0.900
0.931 0.933
鉱油-T
鉱油-U
脂肪酸
カセイソーダ
0.954
0.973
0.914
1.520
0.966 0.950
(注)理論密度は、原料密度に各構成成分の配合量を乗じて、これを合計して求めた。

 

この結果から理論密度と測定密度とに大きな差異は認められず、さらにグリース構成成分である基油の密度と極めて近似している事が分かります。これは、グリースの密度は含有量の多い基油に大きく影響され、含有量の少ない増ちょう剤及び添加剤の密度の影響をあまり受けない事をものがたっています。
なおこのデーターで、グリースA、Dは理論密度に比べ測定密度が、グリースB、C、Eは逆に理論密度がそれぞれ高い値を示していますが全述のように、脱泡の難易の程度が石けん繊維の形態によって差異を生じこれが測定密度に影響を及ぼしたものであろうと考えられます。

 
 

 
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