ID-L000 潤滑剤としてのグラファイト(黒鉛)の用途と使用例
 
 
黒鉛には天然黒鉛と人造黒鉛がある。
天然黒鉛はスリランカ,マダガスカル島,中国などで産出されている。人造黒鉛は石油コークスをタールピッチをバインダーとして成形し,1999-2003℃以上の高温で黒鉛化し製造されている。また,潤滑剤として多く用いられているコロイダル黒鉛は,天然黒鉛,人造黒鉛を問わず1μm以下に粉砕された黒鉛粉末を水,油などの溶媒中に少量の分散剤,バインダーと共に混合分散されたものである。

黒鉛の一般的性質は以下の通りである。
(1)柔軟でよく滑る。すなわち,優れた潤滑性を有する。
(2)化学的に非常に安定であり,ほとんどの有機溶剤,腐食性の化学薬品に侵されない
(3)毒性がなく安価である。
(4)比較的高温でも使用に耐え得る。
(5)熱と電気を良く伝える。

黒鉛の結晶構造は層状構造になっており,この層間で簡単にせん断が起こり,黒鉛が低摩擦を示すという粒子内滑り説がある。その他,黒鉛粒子と黒鉛粒子との間で滑るという粒子間滑り説,黒鉛の摩耗粉の一部がカーリングすることによって潤滑するとする説があるが,いずれも未だに定説にはなっていない。

黒鉛の潤滑性は,一般的には結晶性(結晶の発達度合い)と純度(固定炭素量)に影響される。結晶性については結晶の発達した鱗状黒鉛が未発達の土状黒鉛より潤滑性に優れ,純度につては純度が高いほど優れた潤滑性を示す。

黒鉛の潤滑剤としての用途は,主に高温域における塑性加工である。具体的には,熱間・温間鍛造加工,アルミ押し出し加工,シームレスパイプ圧延加工〔プラグミル方式(エロンゲーター,プラグミル,リーラー,サイザー),マンドレルミル方式のマンドレルバー潤滑など〕伸線加工などがある。また,アルミダイキャスト加工におけるプランジャー用潤滑剤がある。

実際に使用されている黒鉛系潤滑剤は,用途,要求性能,使用方法に応じて組成されており,具体的組成としては
@黒鉛,分散剤(界面活性剤,水溶性ポリマー),水
A黒鉛,分散剤(ベントナイト),鉱油,
B黒鉛,無機塩
C黒鉛,分散剤(界面活性剤,水溶性ポリマー),有機ポリマー,水
D黒鉛,分散剤(界面活性剤),無機塩,水
などがある。

その他黒鉛は,自己潤滑性の摩擦部品,例えばすべり軸受,シール剤,集電ブラシなどに用いられている。さらには,プラスチックの充填材料として,自己潤滑性プラスチックの耐荷重能や耐摩耗性を向上させるのに使用されている。

以上
 
 

 
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