ID-027 ガソリンエンジンオイルの分類
 ガソリンエンジンは、大別しますと、@2サイクルエンジン、A4サイクルエンジン、Bロータリーエンジンの3種類に分類されます。Bのロータリーエンジンでは、オイルはAの4サイクルエンジンオイルが使用されていますので、オイルとしては2分類と言えます。

1.2サイクルエンジンオイル
 世界的な規格はありませんが、日本のJASO(社団法人自動車技術会の自動車規格組織)が制定した規格が東南アジアをはじめ、世界的に通用するようになってきました。
JASO
M345
FA エンジン油として必要な品質を備えている
FB FAに対し、規定の性能を満たす品質を備えている
FC 排気煙やエンジン・排気管の清浄性が優れている

【表−1】JASOによる2サイクルエンジン油の規格
(説明文は意訳してあります)
2.4サイクルエンジンオイル
 4サイクルエンジンは、自動車用エンジンの他、小型発電機用、マリンエンジン、バイク等広い範囲で使用されていますが、その規格についても自動車用によって規定され、品質と粘度グレードの2部から構成されています。

(1)APIによるサービス分類
 世界的に通用する、API(アメリカ石油協会)が制定する規格です。1955年に制定されて以来、SA,SB・・・・・SH,SJ、そして1999-2003年7月には、API-SLが制定されています。本規格にある「S」は、Spark Ignition EngineのSもしくは、SSでのServiceFillのSを示しているとされます。
 1993年API-SHが制定されましたが、この規格以降市場での品質確保のため、オイルの認証制度ならびにモニタリングが実施されるようになっています。同時に、上記に加えて省燃費性の基準が追加せれています。ユーザーにわかりやすいように、"ドーナツマーク"【図−1】が表示されるようになりました。

【図−1】ドーナツマーク  【図−2】スターバーストマーク

(2)ILSACによる省燃費規格
 1993年、ILSAC(アメリカと日本の自動車工業会が設立した、国際潤滑油標準化および認定委員会)は、エンジンの高性能化と環境対応に整合させる目的で「GF−1」という規格を制定しました。(GFとはGasoline Fuelの意)
 基本的には、一般的な品質性状をAPI規格と整合させ、省燃費性能について規定しています。【図−3】には、省燃費性の要求向上率を示します。現在は「APISL/GF−3」となっています。
 また、この規格に合格する省燃費オイルには、"スターバーストマーク"【図−2】が添付されています。【表−2】は、APIサービス分類ととILSAC規格の対応を示したものです。

【図−3】省燃費性の要求向上率

市場導入時期 API規格 ILSAC規格
1980年 SF
1988年 SG
1993年8月 SH
SH/EC-U GF−1
1996年10月 SJ
SJ/EC GF−2
1999-2003年7月 SL
SL/EC GF−3
(注)*印
APISH/EC-Uは、以降のSJ,SLに表示されているECとは、その基準が異なっています

【表−2】APIサービス分類とILSAC規格の対応

(3)ACEA(欧州自動車工業会)規格
 欧州の自動車メーカーによって1996年に制定されました。ガソリンエンジンオイルの分類は『A規格』として、「A1」〜「A3」まで制定されています。APIとは異なり、数字による序列はありません。
【表−3】にACEA規格の概要を示します。

A1 低摩擦、低粘度の省燃費性のあるガソリンエンジンオイル
A2 一般的なガソリンエンジンオイル
A3 高性能でロングドレイン性のあるガソリンエンジンオイル

【表−3】欧州;ACEAの規格

(4)JASO(社団法人自動車技術会の自動車規格組織)規格
 モーターバイク用の4サイクルエンジンオイルに対して1999-2003年JASOT903として「MA」,「MB」の2種類の規格を制定しています。両者は摩擦特性指数の違いによって分類されています。

MA 一般的な摩擦特性を示すオイル
MB 摩擦抵抗が低いオイル

【表−4】JASOによる4サイクルバイク用規格

 一般にモーターバイクでは、エンジンオイルがクラッチやトランスミッションの潤滑を兼ねているタイプが多く、近年の乗用車用高級モーターオイルでは、摩擦抵抗値が低いものが多いためにすべりが発生し、クラッチのスムーズな繋がりが行われにくくなっています。

(5)JIS(日本工業規格)規格
 JISにおいても「内燃機関用潤滑油JISK2215」として規定されていますが、近年の高性能ガソリンエンジンオイルの品質とは乖離しているため、ほとんど使用されていません。ここでは省略いたします。

U.4サイクルエンジンオイルの粘度分類
 エンジンオイルの粘度分類については、SAE(アメリカ自動車技術会)が制定した「SAE−J300」が世界的に普及しています。粘度グレードに「W」が表示されているものは、寒冷地仕様あるいは冬期仕様で「Winter」から採られているとされます。1999-2003年には、低温粘度特性が改訂されています。
(注)*1;0W−40,5W−40,10W−40のグレードオイル、
*2;15W−40,20W−40,25W−40のグレードオイル

参考出典;ペトロテック1999-2003,Vol.24,No.6他




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