ID-S23 オイルシールについて
 
 オイルシールについて
 密封装置(シール)は身近な自動車、洗濯機やジューサー等の家庭電気製品、さらに船舶や鉄道車両など幅広い用途に使用され、対象流体の漏れ防止および外部からのダストや泥水などの浸入防止を行っています。
 密封装置は機器のベアリングの潤滑油を密封することに代表される運動用シールと、配管のフランジ部や自動車のエンジンガスケットに代表される固定用シールに大別されます。このうち、オイルシールはメカニカルシール、リップパッキン、スクィーズパッキン、ラビリンスシールなどと共に運動用シールとして定義付けられています。

 オイルシールは、他の運動用シールと比較すると、

 @構造が簡単で取り扱い易く、比較的低価格である。
 A油や液体に対して十分な耐性を持ち、同時にダストシールを可能にする。
 B軸偏心量の大きい所や、高速域など比較的広い使用範囲に使用できる。
 C低摩擦力で安定した密封性能が長期にわたり得られる。

 などの利点があり、これらが他の運動用シールに比べ最も多く用いられている理由となっています。
 
 オイルシールの基本的な構造と各部の働きを図1、表1に示しました。オイルシールは金属補強環にシールリップを構成する合成ゴムを焼き付け接着した後、適当な軸締め付け力をリップに付与するため、ばねを組み込んだ構造となっています。そのため、軸のかなりの偏心にも追随できるようになっており、また、金属補強環の剛性を利用して機械本体に固定されます。リップ部に使用される合成ゴムはニトリル、アクリル、シリコーン、ふっ素ゴムなどがあり、使用条件によって選定されます。機器のベアリングの潤滑油を密封することに代表される運動用オイルシールは、シールの密封面(オイルシールの接触幅など)と相手面(軸表面)との間に、相対運動下で非常に薄い流体膜を形成させつつ、密封を行うことで低摩擦、長寿命を達成させています。

 

 
図1 オイルシール基本構造
 
 
表1 オイルシール各部の働き
 
名称 各部の働き
@ リップ部 リップ先端部
(しゅう動面)
リップ先端は、くさび状の断面形状をなし、軸表面に押しつけられて、流体を密封する働きをする。
A シールリップ部 シールリップは、フレキシブルなエラストマーでできており、機械の振動や密封流体の圧力変動の影響に対し、安定した密封作用を保つように設計され、リップ先端部と軸表面との接触状態を安定した状態に保つ働きをする。なお、”ばね”はシールリップ部の軸への押し付け力を長期間維持する。
B ダストリップ部 ダストリップは補助的につけられた”ばね”なしリップで、ダストの侵入を防ぐ働きをする。
C はめあい部 はめあい部は、オイルシールをハウジング穴に固定すると同時に、オイルシール外周面とハウジング内面との接触面からの流体の漏れ、またはダストの侵入を防ぐ役目をする。なお、金属環は、オイルシールをハウジングに固定するためのはめあい力を確保する。
「出典」
  オイルシールQ&A 月刊トライボロジ1995.9 p44
 
 

 
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